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挨拶
  武蔵学園学園長 有馬朗人




「小学校の理科教育の現状と課題」
  帝京大学教職大学院教授 星野昌治(ほしのよしはる)


      小学校理科の授業は、3年以上、週3時間実施されている。目的は、比較する力、要因抽出の力、条件制御の力、推論する力などの問題解決の能力や、生命尊重、生物愛護などの自然を愛する心情を育てることである。学習内容は、粒子、エネルギー、生命、地球の分野の基礎的な科学概念を身に付けさせるものである。今後、実験、観察や言語活動の一層の充実の観点から授業時間の増加や、系統的な学習から低学年の理科の新設が必要である。


「韓国と台湾の理数英才教育の現状」
  日鉄住金総研株式会社 山藤康夫(さんどうやすお)


      台湾等では早期英才発掘制度と理数系英才のために特化した中等教育が今世紀初頭から始動した。背景には激化するグローバル競争を勝ち抜くためには、理数系教育の強化こそが最良の政策だという考え方がある。小学生段階から選抜され、優れた教師陣や上位の教育機関による指導を受け、科学コンテストや夏休キャンプなどに参加する。通常の授業では味わえない知的興奮が体験でき、学習意欲が喚起されやすい教育環境が整備されている。


「理科補助教材の作成と活用について」   京都市立桂川小学校教頭 浅田浩


      小学校理科の研究授業で,児童の生活経験の少なさを嘆く教員が多い。児童の生活実態に原因を求めて問題の解決に至るのだろうか。自然事象に関わる体験が乏しいからこそ,学校生活や理科の授業で体験を仕組んでいかねばならない。観察や実験といった理科ならではの直接体験を基に,科学的な見方や考え方を養うことが教科としての目標である。そこで,市立小学校の先生方が,どのような教材を開発し活用しているのか紹介する。


「日本の中学理科教育の現状と課題」
  全国中学校理科教育研究会会長 高畠勇二


      平成24年度から完全実施された新学習指導要領では、従来に比べ授業時数と指導内容が3割増加した一方で、選択教科が廃止された。しかし、実施に伴う人的・物的補償の手立ては行われていない現状がある。また、重視されている探究的な学習や課題解決的な学習に対する教師自身の意識も高まっていない。中学校理科教育が置かれている今の状況を改善し、社会からの要請に応えることができるよう研究会として積極的に取り組んでいきたい。


討論
  司会:京都大学基礎物理学研究所教授 佐々木節
  討論者: 有馬朗人,中村道治,小林誠,
                井村 裕夫,尾池和夫,北原和夫



「SSH活動について」
  京都市立堀川高等学校 飯澤功


      京都市立堀川高等学校では,これまでの12年間のSSH研究期間の中で,高校生が課題研究を進める上で,特に困難を感じる事が多い内容が明らかになった。それは,研究対象として適切なテーマを見つけること,研究テーマを自分で実施可能な研究計画に落とし込むこと,そして,多くの人に対して説得力をもつ文章を書くこと,の3点である。本講演ではこれらの課題を解決するために本校が実施した取組を報告する。


「モチベーション喚起のための科学教育について」
  福島県立安達高等学校 對馬俊晴(つしまとしはる)

      生徒自らが主体的に学習や研究に取り組まなければ実りが少ないことから,モチベーションをいかに喚起し持続させるかが重要課題である。さらに,その生徒たちに直接対峙する学校教育の教師の役割は非常に大きい。SSH担当時に得られた科学教育の手法や教師の意識変容は,SSH校でない学校での科学系部活動・理科教育,科学教育としての持続発展教育(ESD),福島の復興教育などにも大きな影響を与えている様子を報告する。


「物理グランプリについて」
  京都府教育庁 丸川修・遠山秀史


      中学生・高校生の物理に対する興味・関心を喚起し、実験や観察を通して科学的なものの見方や思考力を育成するため、京都大学と京都府教育委員会の連携事業として平成22年度から始まった取組である。生徒が理論問題と実験問題に挑戦する1stステージ京都物理コンテストと、大学生・大学院生をチューターとして生徒がグループで探究実験に挑戦し、プレゼンテーションを行う2ndステージ物理チャレンジ道場からなる。


「学習科目選択と就職後の所得に関する調査」
  神戸大学特命教授・京都大学特任教授西村和雄


      数学と理科を学ぶことがキャリア形成に与える影響について、調査を通じて明らかにする。また、自学自習の教材を補助教材として使うことで、学力が向上した実践例について述べる。最後に、子供の道徳観を育てるうえで、規範が持つ意味について述べる。


討論
  司会:京都大学総合博物館館長 大野照文
  討論者: 有馬朗人,中村道治,小林誠,
                井村 裕夫,尾池和夫,北原和夫